音声の力を軸に、映像配信の可能性を広げる。(株式会社TBSラジオ VR-120HD) 株式会社TBSラジオ https://www.tbsradio.jp/ スタジオ内に設置された配信機材ラック(左端) AMラジオの老舗として長年にわたりリスナーに親しまれてきたTBSラジオ。近年は音声コンテンツに留まらず、YouTubeライブ配信、ビデオポッドキャスト、Twitch配信など多彩なデジタル施策を精力的に展開している。その映像配信の現場を支えているのが、ローランド VR-120HDだ。スタジオ更新の経緯から日常的な活用法、ローランド製品を選んだ理由まで、編成戦略部の富田大滋氏に話を伺った。 株式会社TBSラジオ 総合戦略局 編成戦略部 兼 デジタル戦略部 富田大滋氏 コロナ禍のスタジオ更新が、映像配信の原点になった —— 映像配信に取り組むようになったきっかけを教えてください。 富田氏:2021年に導入した第8スタジオは、2020年に仕様を検討している最中に、ちょうどコロナ禍に入ったんです。当初の計画から方向転換して、出演者がリモート出演できる仕組み、スタッフ同士が離隔距離を取れる構造、そして映像を迅速に配信できる機能という三つの命題を新たに与えられました。ブース内の照明は、色温度であるケルビン値を意識してテレビスタジオに近い値でかつ広角の照明を採用し、一方で副調整室内は裏方であるので、色温度も低く、狭角の照明を採用しました。映像が映り込む壁にはTBSラジオのロゴパネルやロールカーテンを設置して、観葉植物も置いて。映ることを前提とするスタジオを一から作り込んでいきました。 —— 映像スイッチャーとして、最初に導入したのがVR-50HD MK IIだったとのことですね。 富田氏:そうです。ラジオのスタジオって、パーソナリティやゲストが必ず決まった席に座るんですよ。ここで喋ったらこのカメラに切り替わる、という仕組み -つまりVideo Follows Audio(ビデオ・フォローズ・オーディオ)機能が使えることが、ラジオに向いているスイッチャーを探す大きな基準でした。配信専属スタッフがいなくても回せる、そこが最初の大前提でしたね VR-120HDは配信機材ラックの上にセッティングされている 生放送の現場が、映像配信の強みになる —— ラジオの生放送スタジオならではの強みはありますか? 富田氏:ラジオって毎日生放送があるじゃないですか。だから、スタジオも機材もスタッフも、常に本番仕様なんです。録り直しが効かない緊張感の中でオペレーションを積み重ねているので、配信のクオリティも自然と上がっていく。テレビのように専門のスイッチャーが何人もいるわけじゃない分、一人ひとりの守備範囲が広くなって、ラジオのミキサー担当が配信の立ち上げまでできるような強固な体制を築いていきました。生放送を軸にしているからこそ、映像も音声も同時に仕上げる力があると感じています。 スタジオ内のカメラの他にお天気カメラなどが接続されている VR-120HDへ。SDI入力の拡張と、音声バスの安全性が決め手 —— VR-50HD MK IIからVR-120HDに移行した理由を教えてください。 富田氏:一番大きかったのはSDI入力が増えたことですね。VR-50HD MK IIは4入力だったので、スタジオカメラ3台に天井カメラやお天気カメラまで入れると、都度ケーブルを差し替えなければならなかった。VR-120HDは6入力ありますから、それが一気に解消されました。うちはスタジオのトランクを同軸で構築しているので、SDI入力の増加は本当にありがたかったです。 スタジオの天井に設置されたPTZカメラと演者への返しモニター —— 音声まわりの変化はいかがでしょうか。 富田氏:VR-50HD MK IIは、Video Follows Audioのトリガーとして使っている音声チャンネルのフェーダーを誤って上げてしまうと、その音声がそのまま配信に乗ってしまうリスクがありました。VR-120HDはバスの設定の自由度が高くなり、フェーダーを上げてもMAINバスに送らない設定にしておけば、配信にその音声は出ない。事故だけは絶対に避けたいので、この安心感は非常に大きいです。配信で事故が起き、放送がおろそかになることだけは絶対避けなくてはなりません。この一点だけでもVR-120HDを追加した価値がありました。 シーンメモリとアルファキーで、無人配信を実現 —— 現在、どのような番組でどのように活用されていますか? 富田氏:現在は3つの生放送スタジオすべてに映像配信設備が入っていて、6スタと8スタがVR-120HD、7スタがVR-50HD MK IIです。約10番組でYouTubeライブ配信を行っていますが、配信専属スタッフが常駐しているのは1番組だけ。残りはシーンメモリを軸にした、ほぼ無人の運用です。 番組ごとに用意しているラベルはマグネットで入れ替えが可能 —— シーンメモリの具体的な使い方を教えてください。 富田氏:放送ミキサーがCMに入る際に親フェーダーを下げると、配信ルートへの音声が無音になります。その無音をトリガーとして、VR-120HDが自動的にCM用のフィラー動画に切り替わる仕組みです。同時にシーンメモリで透過ロゴを非表示にするなど、複数の操作をワンアクションで完結できる。放送ミキサーは普段通りの操作をするだけで配信側は自動で完結する。この"放送の流れを崩さない"設計が、現場での信頼に直結しています。 —— グラフィック表現の自由度はいかがでしょうか。 富田氏:アルファキー対応も大きかったです。VR-50HD MK IIはビットマップ形式しか扱えなかったので、透過PNGのロゴを柔軟に使えなかったんです。VR-120HDはアルファキーが使えるので、スポンサーロゴやグラデーション・半透明のテロップにも対応できるようになりました。PinPも4段まで積めますから、複数の話者を同時に映しながらスプリットやワイプを組み合わせたリッチな演出も実現しています。 REACから始まった、ローランドへの揺るぎない信頼 —— ローランドというブランドを選んだ理由は? 富田氏:私はもともと技術部門でオーディオ機器を長く扱っていました。当時、ローランドのREACという音声のデジタル伝送技術を初めて使ったときの衝撃は今でも覚えています。それまで重たいマルチケーブルを引いていたのが、LANケーブル一本でマルチチャンネルがつながってしまう。物理的なパッチングからケーブルの意味を一本ずつ体で覚えてきた人間だからこそ、あの体験が革命的でした。楽器・音響機器で培われた技術の確かさが映像の世界にも貫かれている。そこからローランドへの信頼があって、VRシリーズを選ぶ際も"これは信頼できる"という直感がありましたね。 —— 価格帯の観点でも特徴がありますか? 富田氏:放送用機材ほど高くなく、民生機ほど安くもない、絶妙な価格帯だと思っています。少人数でも映像配信に取り組みたいラジオ局にはちょうどいい領域で、入力スケーラー機能でPC画面や各種カメラを解像度を問わず受け入れられますから、専門スタッフがいなくても"とりあえず挿せば映る"安心感があります。 音声を軸に、映像はその先にある可能性として —— 今後の展望を聞かせてください。 富田氏:基本的な思想はワンコンテンツ・マルチユースです。スタジオで生放送があった日に、ポッドキャスト、ライブ配信、ショート動画、SNS投稿が自動的に生まれる仕組みを作りたい。あくまで音声が主役で、ラジオとしての競争優位性はそこにあります。ただ映像があることで、タイアップ企画を実現しやすくなったり、新しいファン層に届いたりする。"映像もできますよ"という選択肢を持っておくことが、これからのラジオ局には大事だと感じています。VR-120HDはその攻めの部分でも守りの部分でも、ラジオ局の実情にフィットしている機材だと思います。 使用製品 VR-120HD お問い合わせ 製品に関するお問い合わせ、デモのご要望など、下記フォームよりお問い合わせください。 お問い合わせ